祇園精舎と金貨

祇園精舎と金貨

2013/9/2(月)

 

 祇園精舎(正式名:祇樹給孤独園精舎)は、シュラーヴァスティー(舎衛城)にあった精舎である。精舎とは比丘(出家修行者)が住する僧院のことをいう。

 インドのシュラーヴァスティーにスダッタ(須達多)という富豪がいた。彼は身寄りのない者を憐れんで食事を給していたため、人々から「給孤独者と呼ばれていた。彼はある日、マガダ国のラージャガハ(王舎城)にゆき、その地にあった竹林精舎でブッダの説法を聞く機会があった。彼は深く敬信の心を生じ、ブッダにコーサラ国のシュラーヴァスティー(舎衛城)への遊化に来てほしいと請い願った。

 彼はブッダの遊化のために精舎を建立するための土地を探した。そして見つかった土地が、ジェータ太子の所有する森林であった。その土地の譲渡を望むスダッタに対して、ジェータ太子が「必要な土地の表面を金貨で敷き詰めたら譲ってやろう」と戯れで言った。ところが、スダッタが本当に金貨を敷き詰め始めたため、ジェータ太子は驚いて、そのまま土地を譲渡し更に自らも樹木を寄付して、寺院建設を援助した。

 この故事の意味について中村元はつぎのように述べている。
「ここでもう一つ注意しておきたいのは、土地の売買が行われているということです。この事実は、すでに当時貨幣経済が発展しつつあったということを示しています。さらに、王権とはりあうだけの経済力を持った長者が、民間に現れていたということもわかります。そういう資産家階級に仏教教団は支援されていたのです。」中村元ブッダ入門』春秋社1991年より