デンマークのジャンテロウ4

デンマークのジャンテロウ4

2013/9/13(金)

 

 歴史を見ると、狩猟採集時代の後の時代において狩猟採集社会に似た平等な共同体を造った人物がいます。ブッダです。ブッダの時代、修行僧はサンガにおいて集団生活をしていました。このサンガでの集団生活は狩猟採集社会の生活に類似しています。乞食でえられた食物だけで生活し、それらは平等に分けられ、また貯蔵は許されません。

 最古層の経典と言われる『スッタニパータ』にはつぎのような記述があります。
217 他人から与えられたもので生活し、[容器の]上の部分からの食物、中ほどからの食物、残りの食物を得ても、(食を与えてくれた人を)ほめることなく、またおとしめて罵ることもないならば、諸々の賢者は、かれを〈聖者〉であると知る。
239 稷・ディングラカ・チーナカ豆・野菜・球根・蔓の実を善き人々から正しいしかたで得て食べながら、欲を貪らず、偽りを語らない。
924 食物や飲料や堅い食べものや衣服を得ても、貯蔵してはならない。またそれらがえられないからとて心配してはならない。

 サンガに生活していた修行僧とはどのような人であったのでしょうか。

513 師は答えた、「サビヤよ、みずから道を修して完全な安らぎに達し、疑いを超え、生存と衰滅を捨て、(清らかな行いに)安立して、迷いの世の再生を滅ぼしつくした人、――かれが〈修行僧〉である。
794 かれははからいをなすことなく、(何物かを)特に重んずることもなく、「これこそ究極の清らかなことだ」と語ることもない。結ばれた執著のきずなをすて去って、世間の何ものについても願望を起すことがない。

 ブッダの生きた紀元前数世紀の頃のインドは産業化が一気に進み、都市が成立し、商品生産が欲望を絶えず刺激する時代であった。例えばブッダは王子だった頃、カーシー産の衣しか着なかったという。商工業が発達しガンジス川を利用した水運が発達し、質のいいカーシー産の織物はブランド化していたのであろう。カーシーは現在のベナレス(ヴァーラーナシー)です。
 
 私はカーシー産の栴檀香(白檀)以外は決して用いなかった。私の被服(着物)はカーシー産のものであった。下着もカーシー産のものであった。内衣(ゆかた)もカーシー産のものであった。(阿含経支部 Anguttara Nikaya Ⅲ 38. Vol.Ⅰ 中村元訳)

 また、祇園精舎の寄贈をしたスダッタという富豪はその土地に敷き詰めるほどの金貨を持っていたといいます。ブッダには、世間が燃えているのがありありと見えた。ブッダの悟りはこの産業化によって生み出された商品や地位、生活様式への欲望から自由になることを目指しました。行き着くところは「少欲知足の生活」です。

 サンガの生活はこの少欲知足の生活を実現する「場」でした。その生活がかつての狩猟採集社会の生活に酷似しているのは偶然ではないと考えます。