2019-12-09から1日間の記事一覧

41-23 莫高窟の白衣仏

41-23 莫高窟の白衣仏 2006/11/28(火) ■ 莫高窟の白衣仏 莫高窟の初期の時代の中心柱窟のうち、奥の部屋の西壁に涅槃像が描かれているのは、第428窟のみである。キジルの中心柱窟の奥壁に涅槃像が安置されているのとは大きな違いがある。北魏の造営とされる…

41-24 中原からの影響

41-24 中原からの影響 2007/2/22(木) ■ はじめに 莫高窟は、鳴沙山の東側絶壁に、南北約1.6kmにわたって開かれた仏教石窟群である。石窟は492、彩色塑像は2400体余り、壁画4万5000㎡があり、さながら砂漠の大画廊である。 莫高窟は、敦煌の町の南東約20km、…

41-25 敦煌の莫高窟の時代区分

41-25 敦煌の莫高窟の時代区分 2007/5/1(火) 現在、敦煌莫高窟にある石窟は各時代の窟の構造、塑像・壁画の様式、および主題内容により、敦煌研究院のスタッフによって一定の編年がなされている。幸い一部の窟には製作年代を示す供養者銘があり、また、窟の…

41-26 北朝期の敦煌

41-26 北朝期の敦煌 2007/5/1(火) 敦煌を含む河西地方では、漢の武帝によって「河西四郡」が置かれて以来、漢族が確固たる経済的基盤のうえに支配権を打ち立てていた。とくに敦煌は西域との交易を通じて繁栄していたことは、よく知られている。そのため四、…

41-27 北魏の中国北部統一と敦煌

41-27 北魏の中国北部統一と敦煌 2007/5/1(火) 太延五年(四三九)、北魏は張掖(ちょうえき)を攻めて北涼を滅ぼし、ようやく中国北部の統一を果たした。しかし、沮渠氏の一族で酒泉太守だった沮渠無諱(そきょむい)が北涼の建て直しをはかって酒泉・敦煌…

41-28 北魏、西魏・北周の時代と敦煌

41-28 北魏、西魏・北周の時代と敦煌 2007/5/1(火) 太和九年(四八五)頃、長楽王秦州刺史の穆亮(ぼくりょう)が敦煌の鎮将に任ぜられた。穆亮は「政治を寛簡にし、窮乏を賑じゅつ」したので、敦煌はようやく安寧の機を得た。しかし当時、柔然の力はなお大…

仏陀とブッダ

仏陀とブッダ 2007/8/20(月) 一冊の本にしてみるといろいろの問題が出てくる。最初に遭遇したのが、仏陀の表現方法である。 ゴータマ・ブッダ、ゴータマ・シッダルーダ、 仏陀、ブッダ、ブツダ、釈迦、釈尊、仏、如来 などが出てくる。困るのは、機械的にど…

『再帰的近代化』とは

『再帰的近代化』とは 2013/8/22(木) ■はじめに 現代は、フランス革命や産業革命以上に大きな革命がおきている。以前の「単純な近代化」の段階においては、近代は近代以前のもの、たとえば伝統的な社会制度や政治制度、あるいは自然を近代化していった。この…

仏教と出家の生活

仏教と出家の生活 2013/8/23(金) ブッダの時代においては、出家者は共同生活を営んでいた。出家者の共同生活では朝の托鉢で得た食べ物を全員が平等で分け合って食べ、食べ物が残っても貯蔵はしない。私はこの共同生活がある時代の人間の生活に酷似しているの…

チンパンジー レオ 松沢哲朗著『想像するちから』

チンパンジー レオ 松沢哲朗著『想像するちから』 2013/8/23(金) 松沢哲朗先生の『想像するちから』(チンパンジーが教えてくれた人間の心)という本に次のような一節がある。途中を省略してあります。 「2006年9月26日に、霊長類研究所にいるレオという当時…

少欲知足とブッダの悟り

少欲知足とブッダの悟り 2013/8/23(金) ■『遺教経(ゆいきょうぎょう)』 少欲知足は『遺教経(ゆいきょうぎょう)』という経典に説かれています。『遺教経』はブッダが入滅に際して、弟子たちに与える最後の言葉を集めたものといわれています。禅宗では、枕…

鉄器の普及と地獄の様相

鉄器の普及と地獄の様相 2013/8/25(日) 紀元前12世頃に成立したとされる最初期のヴェーダである『リグ・ヴェーダ』が理想とする人間像は、現世の享楽を楽しみ百歳の長寿を保った後、死の道を発見したヤマの楽園世界において死後、祖霊と楽しく交わるというも…

「苦楽中道」の積極意味

「苦楽中道」積極意味 2013/8/25(日) 伝統的なブッダの伝記(仏伝)によれば、縁起説がブッダの悟りの内容であったとされる。ブッダは解脱をもとめて、悦楽と苦行の中間の道(中道)をとり、禅定に励んだ。そして、禅定の中で得た知見が、ブッダを安らぎに導…

充足されることのない欲望

充足されることのない欲望 2013/8/26(月) 中山元氏は「古代ギリシアに繁栄と没落をもたらした競争原理」において次のように述べる。 欲望と社会的承認 http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20121204/240545/ ぼくたちの欲望は他者の欲望するものを…

仏教なぜなぜ

仏教なぜなぜ なんのために本を書いているのか。日常勤行になぜ経典からの引用が少ないのか。経典はなぜ漢文なのか。お盆やお彼岸の行事の意味は何か。なぜ、お寺に稲荷さんがいるのか。経典を読むだけで功徳があるのか。線香や蝋燭はなんのため。ご先祖はど…

燃えている

燃えている 2013/8/28(水) ブッダは、欲望への執着が苦の原因である、としている。それではその欲望とはいかなるものか。その内容を考える目にその激しさ、執拗さについての仏典に注目していただきたい。 先ず、愛欲は蔦や根に譬えられる。(スッタ・ニパータ…

ブッダに迫る

ブッダに迫る 2013/8/29(木) 1.ヨーロッパ近代哲学 ショーペンハウアー、ニーチェ2.日本の「少欲知足」文化 清貧の思想の系譜3.経済学の見直し 佐伯啓思4.歴史観の反省 発展史観から円環史観へ、ヨーロッパ中心史観の反省5.大乗相応の地 日本仏教…

アーリアの侵入と先住民族

アーリアの侵入と先住民族 2013/9/1(日) ■ インダス文明 紀元前2500年頃に、インダス河流域に都市文明が興った。この文明はインダス文明である。紀元前2000年頃から次第に衰退し始め、紀元前1800年頃に滅亡してしまった。 土地の隆起によってインダス河の流…

ヴェーダ時代のダイナミズム

ヴェーダ時代のダイナミズム 2013/9/2(月) ブッダの時代の北インドには十六の大国が林立していた。いずれもヴェーダの文化を基調としていたが東西では大きな違いがあった。西部のパンジャーブ(インダス河上流域)地方にはクル王国、ドアーブ(ガンジス河上…

祇園精舎と金貨

祇園精舎と金貨 2013/9/2(月) 祇園精舎(正式名:祇樹給孤独園精舎)は、シュラーヴァスティー(舎衛城)にあった精舎である。精舎とは比丘(出家修行者)が住する僧院のことをいう。 インドのシュラーヴァスティーにスダッタ(須達多)という富豪がいた。彼…

欲望と仏教

欲望と仏教 2013/9/3(火) ■ はじめに 「縁起、無常、無我」よりも、「少欲知足」と「今、ここ」の二つの言葉にブッダの悟りが言い尽くされているように思う。 ■ 「少欲知足」の欲 少欲の「欲」の意味が重要である。欲は欲求(生理的欲求)と欲望(社会的欲望…

ナイルの氾濫と暦

ナイルの氾濫と暦 2013/9/4(水) ナイル川の氾濫は上流域の熱帯雨林地帯に雨期がおとずれ大量の雨が降ることによって起こる。上流域は5000km以上のエチオピア付近である。雨期は毎年6月から8月。その水がナイル川を下って下流域で氾濫を引き起こす。エジプト…

古代インドの暦とインダス河

古代インドの暦とインダス河 2013/9/5(木) 最初のヴェーダである『リグ・ヴェーダ』の時代、インドにはなぜか暦は発達しなかった。太陰暦が主で太陽暦の一年に合わせて閏月をいれていた。インドでは本格的な暦が作られるようになったのは紀元後5世紀になって…

業と輪廻の思想(後) 善悪を超える行為

業と輪廻の思想(後) 善悪を超える行為 2013/9/7(土) ブッダの時代のインドでは高い農業生産力に支えられた豊かな生活があった。豊かな時代にあって人々は氏族や家族の共同体の軛から解放され自由な個人となった。ブッダが出るまでにインドには千年近いヴェ…

業と輪廻の思想(前) 個我の成立

業と輪廻の思想(前) 個我の成立 2013/9/10(火) ブッダが出てきた紀元前4~5世紀の頃には、業(ごう)と輪廻(りんね)の思想が成立していた。輪廻とは、生き物がさまざまな生存となって生まれ変わることである。インドでは、『チャーンドーギヤ』(5-3-10…

デンマークのジャンテロウ 2

デンマークのジャンテロウ 2 2013/9/12(木) ヤンテは架空の村です。1933年にデンマークのアクセル・サンダモセの小説に出てきます。この小説は当時のデンマーク人に対する風刺だったようです。当時のデンマークの社会はいわば「悪しき平等主義」に陥って、現…

デンマークのジャンテロウ 1

2013年度の世界幸福度レポート(World Happiness Report)が、コロンビア大学地球研究所から発表されました。これによると、世界で最も幸福度の高い国はデンマークで、続く2~5位は順にノルウェー、スイス、オランダ、スウェーデンとなっています。 この総合…

デンマークのジャンテロウ 3

ジャンテロウ、つまりヤンテ村の法律を見ているうちにいくつかの類似する例を思い出しました。競争社会になる前の日本の共同体です。農村共同体だけでなく企業内の社会もヤンテ村のような共同体であったのではないでしょうか。そこでは、まさに出る杭は打た…

デンマークのジャンテロウ4

デンマークのジャンテロウ4 2013/9/13(金) 歴史を見ると、狩猟採集時代の後の時代において狩猟採集社会に似た平等な共同体を造った人物がいます。ブッダです。ブッダの時代、修行僧はサンガにおいて集団生活をしていました。このサンガでの集団生活は狩猟採…

ショーペンハウアーとブッダ 1

ショーペンハウアー(1788-1860年)は、ドイツの哲学者、主著は『意志と表象としての世界』(1819年)である。ナポレオン戦争や48年革命の時代のドイツ諸都市を舞台に独創的哲学は形成された。ショーペンハウアーが生きた時代は、「哲学の荒れ狂った時代」言い換…