ショーペンハウアーとブッダ 1

 ショーペンハウアー(1788-1860年)は、ドイツの哲学者、主著は『意志と表象としての世界』(1819年)である。ナポレオン戦争や48年革命の時代のドイツ諸都市を舞台に独創的哲学は形成された。ショーペンハウアーが生きた時代は、「哲学の荒れ狂った時代」言い換えればドイツ哲学の全盛期であった。カント、ヘーゲルショーペンハウアーニーチェなどといった天才が出現した時代である。

 イエナ大学にいたときに、東洋学者マイヤーとの交友をとおして、インドの仏教哲学やウパニシャッド哲学と出会った。『意志と表象としての世界』にはこうした研究が反映されている。この著書において、彼の無神論的なペシミズムの哲学にもとづく倫理学形而上学が展開された。『意志と表象としての世界』は当初ほとんど反響はなかった。

 ショーペンハウアーは、『意志と表象としての世界』の中で、「『世界はわたしの表象である。』 ― これは、生きて認識をいとなむものすべてに関して当てはまるひとつの真理である」と述べている。さらに、表象は、物自体としての意志が現象したものである、とも述べている。ここに出てくる「物自体」というのは、そもそもがカントの用語である。

 ショーペンハウアーによれば、生の悲劇は意志の本質に由来する。意志は、個人をその目標の実現にむけてかりたてるが、そのどれひとつとして、盲目的な生命衝動である意志の無限な活動を永続的に満足させることはできない。こうして、人生は苦悩の世界とならざるをえない。この苦悩の世界を脱却するただひとつの道は意志の否定であり、一種の諦観の態度である。

 

2013/9/15(日)