32-09 『三十二相経』より

32-09 『三十二相経』より

2006/7/25(火)


『原始仏典』第三巻 長部経典Ⅲ 『三十二相経』

 本経は、仏陀がサーヴァッティー市の給孤独長者の園林に滞在しているとき、偉大な人に具わっている三十二の身体的特徴(三十二大人相)について説かれたものである。

 先ず、三十二の相を具えている人は、将来、在家に在っては、転輪聖王になり、出家すれば、仏陀に成るという。そして、それぞれの特徴(相)について、それがどのような善行によって獲得されるかということと、その特徴を具える偉人はどのような果報を得るかということについて説かれ、続いて詩句で要約される。このような形式で三十二の相について、詳細な説明がなされるのである。

 本経に対応する漢訳は「中阿含経」五九、『三十二相経』(大正蔵一、四九三上-四九四中)である。しかし、本経の大部分を占める各相についての説明(第一章四節から第二章三一節まで)は、「中阿含経」には訳出されていない。この部分の漢訳は『優婆夷浄行法門経』(大正蔵一四、九五五上-九六○上)である

(岡田行弘「三十二大人相の成立」『勝呂信静博士古稀記念論文集』山喜房、一九九六年、七一-八六頁参照)。

第一章
 わたしはこのように聞いた。あるとき世尊はサーヴァッティー市のジェータ林中の孤独な人々に食を給する長者(アナータピンデイカ)の園林に滞在しておられた。そのとき世尊は修行僧たちに「修行僧のみなさん」と呼びかけた。修行僧たちは「尊いお方」と答えた。世尊は次のように説かれた。

 修行僧のみなさん、偉大な人には三十二の偉人の特徴があります。これらを具える偉大な人には、二つの将来があり、それ以外はありません。もし在家の生活を送れば、転輪聖王(世界を支配する帝王)となって徳高き真理の王、四方の支配者、国の支配者、七宝の所有者となります。この人にはこのような七つの宝が具わります。すなわち輪宝、象宝、馬宝、マニ宝、女宝、居士宝、そして第七番目の将兵宝です。また王には千人以上の息子がいて、勇士、英雄であって、敵軍を打破するものたちであります。かの王は、この大地を海の周縁まで、刑罰によらず、武器によらず、 ダルマ(正義)によって征服して統治しています。

 もしかれが在家の生活を捨てて出家者となれば、真人・正しく覚った人となり、この世で煩悩の覆いを開いたものとなるのです。

 経はこの三十二の偉人の特徴について説く。
 さて、修行僧のみなさん、偉大な人は安定した足をしています(1 足安立相)。じつに修行僧のみなさん、偉大な人が安定した足をしているのは、修行僧のみなさん、偉大な人の大人相です。というように
2 足下二輪相、3 足眼広平相、4 長指相、5 足柔軟相、6 手足網綬相、・・・・・についても同様の表現が続く。