32-08 小乗の『大般涅槃経』より

32-08 小乗の『大般涅槃経』より

2006/7/24(月)


 小乗の『大般涅槃経』(だいはつねはんきょう)から下記に引用します。大乗にも『涅槃経』があります。同じく釈尊の涅槃をテーマにしていますが、小乗の『涅槃経』は釈尊の入滅のシーンで終わるのに対して、大乗の『涅槃経』は釈尊の入滅のシーンから始まります。このシーンを借りて仏の永遠性を説いたものです。


■ 転輪聖王と仏塔

 アーナンダは、修行完成者の遺体に対して質問をしますと、釈尊は出家者には「遺骨の供養(崇拝)にかかずらうな」と修行に専念するようにさとし、如来に対して特に深い崇敬の念を懐いている賢者たちが王族やバラモン資産家などの中にいるので、彼らにまかすように指示します。またアーナンダが遺体の取り扱いについて質問すると、「世界を支配する帝王(転輪聖王)の葬法にならって扱うがよい」とし、具体的には、――

 アーナンダよ。世界を支配する帝王の遺体を新しい布で包む。新しい布で包んでから、次に打ってときほごした綿で包む。打ってときほごした綿で包んでから、次に新しい布でもって包む。このようなしかたで世界を支配する帝王の遺体五百重に包んで、それから鉄の油槽に入れ、他の鉄の油槽で覆い、あらゆる香料を含む薪の堆積をつくって、世界を支配する帝王の遺体を火葬に付する。そうして四つ辻に、世界を支配する帝王のストゥーパをつくる。アーナンダよ。世界を支配する帝王の遺体に対しては、このように処理するのである。

 アーナンダよ。世界を支配する帝王の遺体を処理するのと同じように、修行完成者の遺体を処理すべきである。四つ辻に、修行完成者のストゥーパをつくるべきである。誰であろうと、そこに花輪または香料または顔料をささげて礼拝し、また心を清らかにして信ずる人々には、長いあいだ利益と幸せとが起るであろう。

 こうした方法でストゥーパ(塔もしくは塚)をつくって拝むに値するのは四種の人々で、その四種とは『如来、尊敬されるべき人、正しいさとりを得た人』、『独りでさとりを得た人(独覚)』、『如来の弟子(声聞)』、『転輪聖王』であり、どういう理由でストゥーパの建立に値するかというと、――

 「これは、かの修行完成者・真人・正しくさとりを開いたひとのストゥーパである」と思って、多くの人は心が浄まる。かれらはそこで心が浄まって、死後に、身体が壊れてのちに、善いところ・天の世界に生れる。
 また『独覚』『声聞』『転輪聖王』についても同様であることを述べられます。

 「尊い方よ。しかし修行完成者のご遺体に対して、われわれはどのように処理したらよいのでしょうか?」
 「アーナンダよ。世界を支配する帝王(転輪聖王)の遺体を処理するようなしかたで、修行完成者の遺体も処理すべきである。」
 「尊い方よ。では、世界を支配する帝王の遺体は、それをどのように処理したらよいのでしょうか?」
 「アーナンダよ。世界を支配する帝王の遺体を、新しい布で包む。新しい布で包んでから、次に打ってほどされた綿で包む。打ってほどされた綿で包んでから、次に新しい布で包む。このようなしかたで、世界を支配する帝王の遺体を五百重に包んで、それから鉄の油槽の中に入れ、他の一つの鉄槽で覆い、あらゆる香料を含む薪の堆積をつくって、世界を支配する帝王の遣体を火葬に付する。そうして四つ辻(四つの道路の合一する地点)に、世界を支配する帝王のストゥーパをつくる。アーナンダよ。世界を支配する帝王の遺体に対しては、このように処理するのである。


■ストゥーバ

 アーナンダよ。世界を支配する帝王の遺体を処理するのと同じように、修行完成者の遺体を処理すべきである。四つ辻に、修行完成者のストゥーパをつくるべきである。誰であろうと、そこに花輪または香料または顔料をささげて礼拝し、また心を浄らかにして信ずる人々には、長いあいだ利益と幸せとが起るであろう。

◇四つの者
 アーナンダよ。これらの四つの者は、ストゥーバをつくって拝まるべきである。その四つというのは、何であるか? 修行完成者・真人・ブッダについては、人々がかれのストウーバをつくってこれを拝むべきである。独りでさとりを開いた人(独覚)については、人々がかれのストゥーパをつくってこれを拝むべきである。修行完成者の教えを聞いて実行する人については、人々がかれのストゥーバをつくってこれを拝むべきである。世界を支配する帝王については、人々がかれのストゥーパをつくってこれを拝むべきである。

◇修行完成者・真人・正しくさとりを開いた人
 そうして、アーナンダよ。どのような道理によって、修行完成者・真人・正しくさとりを開いた人については、人々がかれのストゥーバをつくってかれを拝むべきであるのか? アーナンダよ。<これは、かの修行完成者・真人・正しくさとりを開いた人のストウーパである>と思って、多くの人は心が浄まる。かれらはそこで心が浄まって、死後に、身体が壊れてのちに、善いところ・天の世界に生れる。アーナンダよ。この道理によって、修行完成者・真人。正しくさとりを開いた人については、人々がかれのストゥーバをつくってこれを拝むべきである。

◇独りでさとりを開いた人
 また、アーナンダよ。どのような道理によって、独りでさとりを開いた人については、人々がかれのストゥーパをつくってこれを拝むべきであるのか?<これは、かの尊師、独りでさとりを開いた人のストゥーパである>と思って、多くの人は心が浄まる。かれらはそこで心が浄まって、死後に、身体が壊れてのちに、善いところ・天の世界に生れる。アーナンダよ。この道理によって、独りでさとりを開いた人については、人々がかれのストゥーパをつくってこれを拝むべきてある。

◇修行完成者
 また、アーナンダよ。どのような道理によって、修行完成者の教えを聞いて実行する人については、人々がかれのストゥーパをつくってこれを拝むべきであるのか? アーナンダよ。<これは、かの修行完成者・真人。正しくさとりを開いた人の教えを聞いて実行した人のストゥーパである>と思って、多くの人は心が浄まる・かれらはそこで心が浄まって、死後に、身体が壊れてのちに、善いところ・天の世界に生れる。アーナンダょ。この道理によって、修行完成者の教えを聞いて実行した人については、人々がかれのストゥーパをつくってこれを拝むべきである。

◇世界を支配する帝王
 また、アーナンダよ。どのような道理によって、世界を支配する帝王については、人々がかれのストゥーバをつくってこれを拝むべきであるのか? <これは、法を遵奉した、正義の王のストゥーバである>と思って、多くの人は心が浄まる。かれらはそこで心が浄まって、死後に、身体が壊れてのちに、善いところ・天の世界に生れる。この道理によって、世界を支配する帝王については、人々がかれのストゥーパをつくってこれを拝むべきである。
 アーナンダよ。この四人については、人々がかれらのストゥーパをつくってこれを拝むべきである。」