32-21 仏塔(ストゥーパ)の建立・管理

32-21 仏塔(ストゥーパ)の建立・管理

2006/8/26(土)


 『仏塔と菩薩に見る賎』の文章は二つの重要な、問題を提起している。

大乗仏教の興起

 従来は、小乗仏教(部派仏教)は仏塔(ストゥーパ)とは一定の距離を保っていた。仏塔の管理はもっぱら在家の信者に任せ、出家した僧はその建設や管理に関わらなかった、とされてきた。小乗の涅槃経の「葬式に関わるな」という仏陀の言葉がおそらくその根拠であろう。しかし、記録を見る限り、僧たちは深く関わってきた。

 仏塔は在家信者のみに関わるものではなく、僧たちが深く関わってきたのならば、仏塔を信仰する在家信者のなかから、大乗仏教の運動が出てきた、という説も成り立たなくなる。もともと、仏塔は寄進によって建設されたものであり、また、管理の費用も寄進によってまかなわれている。寄進は、寄進の相手を必要とするものであり、多くの場合は、特定の出家者の集団が指定される。


■仏像と小乗仏教

 僧の中には、建設の専門家がいて、彼らの指導のもとに、仏塔や伽藍などが建設されたのだろう。だとすれば、その延長に仏像の制作もはじまったと考えることも可能である。仏像の始まりは、カニシカ金貨に帰せられると考えるが、その後の大量の仏像の制作は、小乗仏教(部派仏教)と仏塔や伽藍の建設との関わりなしには考えられないであろう。