200-25-23 普賢菩薩

25-23 普賢菩薩

2006/4/7(金)


 所用があって東京へ行ったので、上野にも寄った。上野の東京国立博物館の平成館では『最澄と天台の国宝』展を開いていた。天台開宗1200年を記念しての特別展である。昨年の11月には京都国立博物館で開いていた。そのときには、残念ながら行きそびれた。仏像に詳しい知人からは、めったに見られぬ「秘仏」がいっぱいある、とは聞いていたのだが。

 今回上京するにあたって調べたら、上野の国立博物館でその特別展を開いているのがわかった。何という運のよさか。五日は昼に東京駅に着いた。八重洲ブックセンターに寄った後、虎ノ門ホテルオークラの玄関前にある美術館「大倉集古館」にいった。『普賢菩薩騎象像』を見るためである。雨が激しく降っていたせいか、入場者は少なく館内は静かだった。『普賢菩薩騎象像』は館の一階の奥に陳列してあり、横からも後ろからも観ることができた。大きさは、象も含めて150cmほどであろうか。

 この像の特徴は「截金文様」(きりがねもんよう)の精緻さである。しかし、照明は十分ではなく、しかもガラス越しとあっては、精緻な文様はほとんど見ることができない。売店で購入した冊子には、精緻さがよくわかるカラー写真が何枚も載せられている。

 鮮やかに施されたであろう彩色もほとんど残っていないし、截金文様もよく見えない。しかし、この『普賢菩薩騎象像』の優美さは失われていない。また、顔立ちには藤原時代の特徴であるあどけなさがある。同じ藤原時代の宇治の平等院の雲中供養菩薩や、大原三千院阿弥陀仏の脇侍である観音・勢至菩薩の顔立ちと共通するものを感ずる。

 かつて、NHKがこの『普賢菩薩騎象像』のコンピューターグラフィックスによる復元を試みたことがある。その復元写真はないとの事であった。その再現の色彩には多少の疑問がある。袖のところの色をベージュにしたのは納得できない。

 そのとき色の復元にあたって参考にされたのが、上野の東京国立博物館所蔵の『普賢菩薩像』である。こちらは絹の生地に書かれた絵であるため、鮮やかな色が残っている。翌日、上野へ行って『最澄と天台の国宝』展を見ていたら、この『普賢菩薩像』もあるではないか。何回も戻っては見ることになった。