22-12 ヒノキ(桧)と松

22-12 ヒノキ(桧)と松

2006/10/26(木)


 わが国ではヒノキ(桧)が珍重されてきた。木彫の仏像の素材や寺院の建築にはヒノキが用いられてきた。ところが韓国の建築用材は赤松が中心である。この違いはどこから生じたのだろうか。広隆寺弥勒菩薩像が赤松でできていることから、朝鮮からもたらされたものであるとされている。しかし、赤松が用いられているからといってなぜ朝鮮渡来と判断されるのか。

 この理由が解るのには少し時間がかかった。結論からいえば、朝鮮ではヒノキがほとんど育たないということである。ヒノキは雨がたくさん降って湿度が適当にないと育たない。朝鮮は比較的雨の少ないところである。日本は高い山脈があり、その山脈に季節風がさえぎられ、多量の雨をもたらす。さらに台風の上陸というおまけまでもある。

 高い山脈は太平洋プレートが押し寄せることによって生ずる造山活動によってできたものである。日本の山の峰には松の木が並ぶ。谷には杉の木が植えられる。最も水分を必要とするからである。中間の斜面でヒノキが育つ。プレートによる造山活動は台湾も同じで、台湾も高い山脈が走っている。そこにヒノキが育っている。薬師寺の再建は、台湾のヒノキが用いられた。

 朝鮮はプレートとの衝突による造山活動はなく、高い山脈は形成されなかった。ソウルから大邱(てぐ)まで国内便飛行機に乗ったことがある。大邱市は韓国南東部の都市で、ソウル、釜山に次ぐ大都市である。機上から見る光景は韓国の水不足を物語っていた。なだらかな山の周りに四つもの貯水池が築かれているのが見えた。

 雨量とヒノキの関係は、その大邱市の国立博物館の館長さんから聞いた話である。館長さんは、日本や台湾の山に何度も登ったことがあるという登山家でもあった。それに日本語が堪能であった。この館長さんの説明で私もようやく納得のできる答えを得ることができた。ただ、韓国は水には必ずしも恵まれてはいないが、反面地震の心配もないということである。