チンパンジー レオ 松沢哲朗著『想像するちから』

チンパンジー レオ 松沢哲朗著『想像するちから』

2013/8/23(金)

 

 松沢哲朗先生の『想像するちから』(チンパンジーが教えてくれた人間の心)という本に次のような一節がある。途中を省略してあります。

 「2006年9月26日に、霊長類研究所にいるレオという当時24歳のチンパンジーが、突然、首から下が麻癖した。診断は急性脊髄炎だった。若人たちのボランティアのおかげで、かろうじてレオの命は支えられた。しかし、レオはぜんぜん動けない。ひどい床ずれになる。体重も減った。

 このチンパンジーは、私であれば生きる希望を失うというような状況のなかでも、まったく変わらなかった。めげた様子が全然ない。けつこういたずら好きな子で、人が来ると、口に含んでいた水をピュッと吹きかける、なんてこともする。キャッと言って逃げようものなら、すごくうれしそうだ。

 人間とは何か。「想像する」ということが人間の特徴だと思った。チンパンジーは、「今、ここの世界」に生きている。今ここの世界を生きているから、チンパンジーは絶望しない。「自分はどうなってしまうんだろう」とは考えない。

 それに対して人間は容易に絶望してしまう。でも、絶望するのと同じ能力、その未来を想像するという能力があるから、人間は希望をもてる。人間とは何か。それは想像するちからを駆使して、希望をもてるのが人間だと思う。」

 ブッダはしかし、この想像力の制御が不可能になってしまったところに「苦」の根源があるとみた。ブッダはこの想像力を一度キャンセルしようとした。