31-15 「唯識」という仏教思想

31-15 「唯識」という仏教思想

2006/9/19(火)


■ はじめに

 グプタ王朝期(320~550年)のインドに「唯識」という仏教思想が生まれた。空の思想を受けつつも、一切が空であるという龍樹の中観派に対し、一切は空にあらずという主張をした。その開祖は、無著、世親という兄弟。玄奘三蔵唯識仏教を求めて天竺(インド)に旅をした。その系譜は法相宗として日本に伝わる。


■ 無著・世親

 無著と世親は、ペシャワールパキスタン)のバラモンの家に生まれた兄弟。兄の無著は部派仏教最大の説一切有部にて出家するが、それに満足せず神通力で兜率天弥勒菩薩に会い、大乗仏教の空の思想を学ぶ。無著の要請で弥勒菩薩は地上に下りて『瑜伽師地論』他を説いたとされる。

 弟の世親も説一切有部にて出家し、説一切有部の教義を集大成した『倶舎論(阿毘達磨倶舎論)』を著す。やがて、兄の無著に説得されて大乗に転向した。

 ◇ 唯識の空
 龍樹(中観派)の「一切は空である」という主張に対して、「一切は空である」と認識する心のみは存在しなくてはならないと唯識は考える。

 ◇ 八識
 唯識では、六つの認識作用(眼・耳・鼻・舌・身・意)に、末那識(まなしき)・阿頼耶識(あらやしき)を独自に加える。末那識とは深層に働く自我執着心のこと。阿頼耶識とは個人存在の根本にある認識作用をいう。


■ 唯識派の展開

弥勒菩薩の説法を聴いたとされる無著とその弟の世親によって唯識は誕生
・徳慧(Gunamati) → 安慧(Sthiramati)の系譜
・護法(Dharmapala) → 戒賢(Silabhadra) → 玄奘三蔵 → 慈恩大師 → 法相宗 → 日本へ
・真諦(Paramartha) → 摂論宗 → (消滅)

引用・参照
http://www.kosaiji.org/Buddhism/yuishiki.htm