23-09 太子の仏教の特色

23-09 太子の仏教の特色

2007/5/9(水)


■ 太子仏教の在家的傾向

 太子の代表的な著作とされているものといえば『三経義疏』である。これは、『法華経』、『維摩経』、『勝鬘経』の三経に対する注釈書の総称であある。内容としては、例えば、『法華義疏』は中国の法雲の『法華義記』の説を本義としながらも、大乗を超えた一乗の主張や、山中での座禅を菩薩の近づいてはいけないものの一つとするなど、在家仏教的傾向を強くもつ。

■ 『三経義疏』の本義について

 『維摩経義疏』 僧肇(そうじょう)の『註維摩経
 『勝鬘経義疏』 敦煌
 『法華義疏』  光宅寺法雲『法華義記』

◇僧肇(そうじょう、384?~414年)
 俗姓は張。京兆の人。はじめ家が貧しく、写本の仕事をしていて、老荘に通じていた。維摩経に感激して出家し、鳩摩羅什が姑臧にいたったことを知ると、赴いてこれに師事した。什に従って長安に入ると、その訳経事業に助力した。什はかれを「解空第一」(空理解の第一人者)と賞讃した。『注維摩詰経』、『肇論』。

◇光宅寺法雲 (ほううん、467~529年)
 7才で建康の荘厳寺に出家し、僧成、玄趣、宝亮の弟子となる。中興寺の僧印に法華経を学ぶ。30才の時妙音寺で法華経維摩経を講じて名声を博す。後に梁の武帝の帰依を得て光宅寺に住す。525年(普通6)大僧正となる。著書の『法華義記』8巻は有名。

 

■ 太子のの仏身論

 太子は如来について「如来は真如、すなわち真実そのものであり、まったく形を離れている、しかも、ありとあらゆるものを照らすを心とし、大悲つねに息むことなく、衆生一人一人のところに、至り尽くしている」という。・・・太子の仏道の基本は帰依三宝であり、さらに南無帰依仏に帰着する。


■ 太子仏教の目指すもの

 しかも太子は『勝鬘経義疏』の中で、第八地の菩薩をしきりに強調しているが、その境地について、

 法の流れに入って念念におのずから知る   『勝鬘経義疏

 と示している。第八地の菩薩とは、太子が目指した最高の境地である。

参照・引用文献
・玉城康四郎・木村清孝 著 NHKブックス 『ブッダの世界』