23-08 天寿国繍帳

23-08 天寿国繍帳

2006/10/26(木)


 東京国立博物館には四つの建物がある。正門を入って正面に見えるのが本館、その左手少し奥に平成館、右手にオリエント館が並ぶ。正門からは見えないが、左に入ってゆくと、法隆寺宝物館がある。先に述べた、天台宗開宗1200年記念 特別展「最澄と天台の国宝」は平成館で開催されている。オリエント館にはガンダーラや、隋・唐の時代の仏像が数多く陳列されている。

 法隆寺宝物館では、「国宝・天寿国繍帳と聖徳太子像」展が今日4月9日まで開催され、国宝の天寿国繍帳が特別公開されている。法隆寺宝物館は、明治初期に皇室へ献納した国宝・聖徳太子絵伝、重文・献納金銅仏(俗に四十八体仏)、金銅透彫潅頂幡、伎楽面など法隆寺献納宝物318件が収蔵されている。

 天寿国繍帳は、聖徳太子が亡くなった622年2月に、太子の天寿国往生のさまを表すことを発願した后の橘大女郎(たちばなのいらつめ)が、祖母になる推古天皇の勅によって完成させたものである。『上宮聖徳法王帝説』には「繍帷二帳」(ぬいものかたびらふたはり)と記されている。

 天寿国繍帳には、100匹の亀の図柄がある。ひとつの亀に4文字、全部で400文字からなる銘文がある。天寿国繍帳の傷みがはげしいので現存する文字は29文字に過ぎないが、平安時代中期に『上宮聖徳法王帝説』に写し取られていたため、今日、その全文が明らかとなっている。

 「世間虚仮、唯仏是真」(世間は虚仮にして、唯仏のみ是れ真なり)の言葉はこの天寿国繍帳の銘文にある言葉である。「天寿国」という言葉は、敦煌経(北魏時代書写華厳経)に加えられた(583年)奥書に「西方天寿国」という言葉があることが最近発見され、西方浄土のことであり、しかも、隋仏教が太子に伝わっていたことも推測されることとなった。

 参照・引用
 『国宝天寿国繍帳』 東京国立博物館