17-03 『上生経』とは
17-03 『上生経』とは
2007/4/25(水)
弥勒について語る中国語訳の経典には、もうひとつ別の『観弥勒菩薩上生兜率天経』というものがある。略して『上生経』と呼ぶ。五世紀の中ごろ沮渠京声(そきょきょうしょう)が訳したと伝えられる。サンスクリット本は伝わっていない。沮渠京声は、北涼を建国し、北魏に滅ぼされて中央アジア高昌に逃れた沮渠氏の一族である。沮渠京声は高昌で『上生経』の原本を手に入れたと伝えられる。
次のような内容である。
釈迦が弟子たちに教えを説いていたとき、その中に弥勒もいた。弥勒は今から12年のちに亡くなり、かならず兜率天に生まれると釈迦が語った。弥勒はあと一回この世に生まれ変わると、真理にめざめて仏陀になることができるという。
つづいて兜率天のありさまが、ことこまかに語られる。そこには宝石に満ちた豪華な宮殿がある。弥勒の弟子になって兜率天に生まれたいなら、この兜率天のありさまを思いをこらして心の中で見つめなければならないという。
弥勒は兜率天に生まれ、それから五十六億万年たって、また、この世にくだるという。弥勒を信じ、弥勒に祈るなら、きっと兜率天に生まれて弥勒にお目にかかれる。そして、弥勒とともにこの世に下り、だれよりも先に弥勒が説く教えを聞くことができる。いつか真理にめざめる約束を弥勒からいただくことができるという。
以上が『上生経』のあらmしである。
参照・引用
・菊地 章太 『弥勒信仰のアジア』大修館書店