41-02 敦煌のモナリザ

41-02 敦煌モナリザ

2006/1/31(火)


 莫高窟のほとんどの石窟では、正面奥に塑像の仏像が安置され、その背後も含めて四面の壁と天井は絵(壁画)で埋め尽くされている。狭い入り口を入ってから振り返るとその両側の壁にも絵が描かれていることがあり驚く。

 南区には492の石窟がある。彩色の塑像が2,000体以上、壁画は合わせて約4万5,000㎡に及ぶ。塑像や壁画の質も高く保存状態もよい。また、五胡十六国北涼の時代から、宋、元の時代までの約1,000年にわたって連綿として造営されてきた。「砂漠の大画廊」といわれる。

 昨年4月17日のNHKで、「新シルクロード第4集 タクラマカン」が放映された。西域南道の西端に位置するオアシス国家ホータンはかつて玉交易で栄え、その富を背景に仏教美術を開花させた。そのホータンの近くのダンダンウイリクの仏教遺跡から「西域のモナリザ」と呼ばれる如来図が発見された。

 屈鉄線という輪郭を力強く描く描法のこの菩薩の顔は気品に満ちている。その微笑みと流し目からくる神秘性は「モナリザ」以上である。この「西域のモナリザ」はウルムチ博物館が所有している。

 敦煌莫高窟にも「モナリザ」がある。初唐(618~712年)に開鑿された第57窟の南壁は『仏樹下説法図』が描かれている。莫高窟の石窟はすべて西を奥として掘られている。南壁は向かって左側の壁になる。如来仏の両側に脇持として菩薩が立っている。向かって左側の菩薩像が「敦煌モナリザ」である。冠に化仏があることから観音菩薩像とされている。

 眉が細く切れ長の目、通った鼻筋に赤く染めた唇、きめの細かい肌、
 たおやかな肢体、安らかな表情など、菩薩としての秀麗さと美しさ
 を強く印象づけ、莫高窟の菩薩の中でも、特に優れた作柄を示している

 かつて日本で開かれた『敦煌美術展』の図録の説明からの引用である。

 宝冠や胸の飾りは、盛り上げた部分に金箔が施されている。石窟は入り口がせまく中に照明はない。懐中電灯の明かりだけでみることになる。懐中電灯で照らすと金の飾りがキラキラと光る。思わずどよめきが窟内に響く。

 「敦煌モナリザ」は、右下の No.9 第57窟(初唐)…菩薩、である。
 http://books.bunka.ac.jp/dunhuang/photo.html