33-03 般若経典群

33-03 般若経典

2006/9/16(土)


■ 般若経の内容

 「般若波羅蜜」とは、一言で言うならば「智慧の完成」であり、それは空の体得によって得られという。部派仏教とくに説一切有部の構築したモノの存在が実在しているという説を強く批判し、その固定的なありかたに対して厳しい否定を投げかける。またその実践を、まったく新しい視点から、現実の日常世界に他者と共に活躍する大乗の菩薩が果たす。この菩薩は必ず仏のさとりを目ざし、かつ衆生の教化に勤めようとの発願から出発する。これを発菩提心といい、以後ついに挫けることなく、終わりのない実践に精進する。この菩薩は、菩薩としてとらわれることがあってはならない。


■ 成立の順序

 般若経典群に属する個々の般若経の成立の順序に関して、種々の議論があった。議論は小品と大品の漢訳が紀元二~三世紀に行われて以来、続けらてきた。しかし、ようやく最近になって、小品系に属する道行般若経の最初の部分が最も古いとほぼ決着した。その個所に摩訶衍(=大乗)の語が登場する。

 般若経の成立以前には、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・般若の六波羅蜜が同列に説かれていたが、その第六の般若波羅蜜が全体を統括しているとする般若経の出現によって、新しい大乗の宣言として見られたのである。


■ 般若経典群 

 般若経典は、「大乗(mahaayaana)」を最初に宣言した経典であり、大乗仏教の先駆を果たした。原型はおよそ紀元前後ごろの成立と考えられており、同じ名称の経典は多数存在し、漢訳された般若経だけでも四十二種ある。また多数のサンスクリット本やチベット訳本が現存している。おおよそ十種以上の系統を異にする般若経典群が現存しており、それぞれ最低六百年あまりにわたってつぎつぎと増広され、それらの各本が漢訳された。

これらの重要なものは、

・小品(しょうぼん)系 
  道行(どうぎょう)般若経、小品般若経、八千頌(はっせんじゅ)般若など
・大品(だいぼん)系 
  放光(ほうこう)般若経、光讃(こうさん)般若経大品般若経、二万五千頌般若
・十万頌般若
・金剛(こんごう)般若経
理趣経(りしゅきょう) (百五十頌般若)
大般若経
・般若心経

 などであり、大般若経は般若心経以外の諸経典のすべてを含むほか、それ以外のものをも加えて完成態としている。